久米禅師、石川郎女 巻2-96、97
   久米禅師の石川郎女を娉(よば)ひし時の歌
  み薦(こも)刈る 信濃の真弓 我が引かば
  貴人(うまひと)さびて いなと言はむかも

   反歌
  み薦(こも)刈る 信濃の真弓 引かずして
  強(し)ひざるわざを 知ると言はなくに
 
口訳   信濃の真弓を引くように、私があなたの気を引いたら、
  (私が)貴人ぶっているといってあなたは「いやです」とおっしゃるのでしょうか。

  信濃の真弓を引くように強く(私のことを)引いたりしないで、
  どうしてあなた様の心を知ることなどできましょう。
    
原文    久米禅師娉石川郎女時歌
  水薦苅 信濃乃真弓 吾引者 宇真人佐備而 不欲常将言可聞

   反歌
  三薦苅 信濃乃真弓 不引為而 強作留行事乎 知跡言莫君二
 
場所  長野県千曲市上山田・千曲川萬葉公園南側 (揮毫者・丸山碧水)
写真  

  

  
2013.4.21
「み薦刈る」は、信濃にかかる枕詞。
「薦(こも)」は沼沢地に生えるイネ科の多年草。
信濃国に多いので信濃の枕詞になったといわれます。
「信濃の真弓」は、信濃が弓を多く生産したための呼称で、「真(ま)}は美称。
ここまでの2句は、いずれも次の「引く」を導く序詞。
場所  鹿児島県薩摩川内市中郷・万葉の散歩道 (揮毫者・橋口常雄)
写真  

  

2020.2.17
薩摩川内市の歴史資料館の裏手の川筋に15基の万葉歌碑が建っており、そのうちのひとつです。
歌碑の「わが引かば」の「か」が修正してあるのが興味深かったです。



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