柿本朝臣人麿 巻4-496
   柿本朝臣人麿の歌
  み熊野の 浦の浜木綿 百重なす
  心は思へど 直(ただ)に逢はぬかも
口訳   熊野の浦の浜木綿の葉が幾重にも重なっている。
  そのように逢いたくてたまらないが、直接逢えないのが残念だ。
場所  和歌山県新宮市三輪崎・孔島 (揮毫者・犬養孝)
原文    柿本朝臣人麿歌
  三熊野之 浦乃濱木綿 百重成 心者雖念 直不相鴨
写真    

    


2022.7.2
熊野は熊野古道で有名な紀伊半島南岸部。
浜木綿(はまゆふ)は温暖な海浜によく見られる多年草。
白い花をつけ、根元に幾重にも葉を茂らせる。
「百重(ももえ)なす」はその葉の様子を指している。心の状態を比喩的に述べたもの。
ただし、単なる比喩ではなく、熊野は飛鳥から遠く離れた場所であり、熊野にいて詠った切実さがこめられている。
「熊野の浦の浜木綿の葉が幾重にも重なっている。
そのように逢いたくて逢いたくてたまらないのに、旅路にある身なので直接逢えないのが無念」という歌である。



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