未詳 巻6-1019
   石上乙麿卿の土佐国に流されし時の歌
  石上 布留の尊(みこと)は た弱女(わやめ)の
  惑(まどひ)に依りて 馬じもの
  縄取り付け 鹿猪(しし)じもの 弓矢囲みて 大君の
  命(みこと)恐(かしこ)み 天離(あまざか)る
  夷辺(ひなべ)に退(まか)る 古衣(ふるごろも)
  又打(まつち)の山ゆ 還り来(こ)ぬかも
口訳   石上の布留の君は、美しい女性への惑いによって、
  まるで馬のように縄をくくりつけられ、獣のように弓矢に囲まれて、
  天皇のご命令で遠い辺地へ流されていく。
  古い衣を打つ待乳山から旅立って、もう帰ってはこないだろう。
場所  和歌山県橋本市隅田町真土 (揮毫者・犬養孝)
原文    石上乙麿卿配土左國之時歌
  石上 振乃尊者 弱女乃 或尓縁而 馬自物 縄取附 肉自物 弓笶圍而 王 命恐
  天離 夷部尓退 古衣 又打山従 還来奴香聞
写真 


2013.8.15
石上乙麿は左大臣麻呂の第三子。
天平11年(739年)藤原宇合の未亡人久米連若売(くめのむらじわかめ)と通じた罪で土佐の国に流され、その時詠んだ歌とされています。
「又打山」は、奈良県五條市にある待乳山。



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