未詳 巻7-1264
   
  西の市に ただ独り出でて 眼並べず
  買ひにし絹の 商(あき)じこりかも
 
口訳   西の市にひとりで行って、見比べもせずに決めて買ってしまった絹は買いそこないだったなあ。
場所  大和郡山市九条町・平城京西の市跡 (揮毫者・犬養孝(国文学者))
原文    
  西市尓 但獨出而 眼不並 買師絹之 商自許里鴨
 
写真  

  
2012.2.15
歌垣で選んだ相手が見かけ倒しであったことをくやんだ歌ともいわれています。
恋の相手を決める時も、市で品定めをするのもよく吟味ししないといけません。
でも、自分が決めるということは「相手」にも「決めてもらっている」という
バーターの関係をよくわかっていないといけませんね。

平城京には、東の市、西の市の2つの市がありました。
市は、左右京職の市司とよばれる役人の監督のもとに、正午から日没まで開かれていました。

市には、税によって集められた各地の食べものや布、馬や牛、さらに奴婢、お経まで売られていました。
品物によって、だいたいの値段がきめられていました。
平城京に暮らすさまざまな人々は、ここで生活に必要な物を手に入れていましたので、市はいつもにぎわっていました。
物価があがると、左右京職の倉の米を市に出して、値段を調整していました。

■東の市で売っていたもの
あしぎぬ、羅(うすもの)、糸、錦、巾子、縫衣、帯、紵(ちょ)、布、苧、木綿、
櫛、針、沓、わらぐつ、筆、墨、丹、珠、玉、薬、大刀、弓、箭(せん)、兵具、
香、鞍橋、鞍褥、鎧、障泥、鉄・金器、漆、油、染草、米、木器、麦、塩、醤、索餅、
心太、海藻、菓子、蒜、干魚、馬、生魚、海菜 など

■西の市で売っていたもの
絹、綿綾、糸、錦、紗、縫衣、裳、帯幡、紵、調布、麻、続麻、櫛、針、わらぐつ、
雑染、簑笠(さりゅう)、染草、土器、油、米、塩、未醤、索餅、糖、心太、海藻、
菓子、干魚、生魚、牛 など



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