高橋虫麿 巻9-1751
   難波(なには)に経宿(やど)りて明日(あくるひ)還り来し時の歌
  島山を い往き廻(めぐ)れる 川副(かはぞ)ひの
  丘辺(をかへ)の道ゆ 昨日(きのふ)こそ
  吾が越え来(こ)しか 一夜のみ
  宿(ね)たりしからに 峰(を)の上の
  桜の花は 瀧(たぎ)の瀬(せ)ゆ
  激(たぎ)ちて流る 君が見む
  その日までには 山下(やまおろし)の
  風な吹きそと 打越えて
  名に負へる社(もり)に 風祭(かざまつり)せな
口訳   島山を行き廻っている河の、その河沿いの丘の辺りの道を通って、
  つい昨日吾は難波へと越えて行ったのであったが、ただ一夜泊まっただけであったのに、
  峰の上の桜の花は激流の瀬から、散り落ちて流れて行く。
  天皇が御覧になられるその日までは、花を散らす風は吹かないでおくれ。
  この山を越えて風神として名高い龍田大社に、風祭りしよう。
    
原文    難波経宿明日還来之時歌
  嶋山乎 射往廻流 河副乃
  丘邊道従 昨日己曾
  吾超来壮鹿 一夜耳
  宿有之柄二 峯上之
  櫻花者 瀧之瀬従
  落堕而流 君之將見
  其日左右庭 山下之
  風莫吹登 打越而
  名二負有社尓 風祭為奈
 
場所  生駒郡三郷町立野南・龍田大社 (揮毫者・坂本信幸)
写真  

  
2014.11.2
龍田大社は、旧称龍田神社。式内社(名神大社)、二十二社(中七社)の一社。
旧社格は官幣大社で、現在は神社本庁の別表神社。
風の神(風神)として古くから信仰を集める。
祭神
天御柱命 (あめのみはしらのみこと)
国御柱命 (くにのみはしらのみこと)
龍田の風神と総称され、広瀬の水神と並び称された。
同社の祝詞などでは、天御柱命は級長津彦命(男神)、国御柱命は級長戸辺命(女神)のこととされている。



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