未詳 巻12-3101・3102
   問答の歌
  紫は 灰指(さ)すものそ 海石榴市(つばいち)の
  八十(やそ)の街(ちまた)に 逢へる児(こ)や 誰

  たらちねの 母が呼ぶ名を 申(もう)さめど
  路(みち)行く人を 誰と知りてか
口訳   紫染めは、灰汁(あく)を入れてこそ美しく仕上がるんだよ。
  あなたのお名前はなんていううんだい。私がいい色に染め上げてあげようじゃないか。

  母が呼ぶ(私の)名をお教えしたいけれども、通りすがりの人が誰かは分からないのでお教えできませんわ。
原文    問答歌
  紫者 灰指物曽 海石榴市之 八十街尓 相兒哉誰

  足千根乃 母之召名乎 雖白 路行人乎 孰跡知而可
場所  桜井市金屋・海石榴市観音入口 (揮毫者・今東光)
写真  


2011.11.22
海石榴市という名は、街路樹に椿の木が植えられていたかららしいです。
場所  奈良市春日野町・春日大社神苑万葉植物園 (揮毫者・島崎藤村)
写真  

  
2012.2.3
昔は市で結婚が行われました。
この問答歌は愛が相当に進んだからではなく、椿市ではじめて逢って心ひかれて男が贈った歌に対して女が答えたものです。
女も心が動いて答えたのでしょうが、まだ名を告げるのはためらっています。



トップページへ