未詳 巻13-3236
   
  そらみつ 倭の國 あをによし
  奈良山越えて 山代の
  管木(つつき)の原 ちはやぶる
  宇治の渡り 滝つ屋の
  阿後尼(あごね)の原を 千歳(ちとせ)に
  欠くることなく 万歳(よろずよ)に
  あり通(かよ)はむと 山科(やましな)の
  石田(いわた)の社の 皇神(すめかみ)に
  幣帛(ぬさ)取り向けて 我は越え行く 逢坂山(おうさかやま)を
口訳   
  空に満ちる大和の国の
  あおによし奈良山を越えて
  山城の管木の原から
  ちはやぶる宇治の渡りを越え
  滝つ屋の 阿後尼(あごね)の原を通り
  千年の後にも欠けることなく
  万年の後まで通い続けようと
  山科の石田の杜の
  皇神に幣帛を手向けて
  私は越えていくことだ。相坂山を。
原文    
  空見津 倭國 青丹吉 寧山越而 山代之
  管木之原 血速舊 于遅乃渡 瀧屋之 阿後尼之原尾 千歳尓
  闕事無 万歳尓 有通将得 山科之 石田之社之 須馬神尓
  奴左取向而 吾者越徃 相坂山遠
場所  京都府宇治市宇治・仏徳山登り口 (揮毫者・山本悠雲)
写真  

  

  


2021.1.9
「山代」国名。京都府南部。
「管木の原」京都府京田辺市、綴喜郡井手町付近の木津川に沿った原。
「宇治の渡り」宇治川の渡し場。
「阿後尼の原」京都府宇治市の宇冶川東岸の地。
「あり通はむ」通い続けよう。
「山科」京都市山科区。
「石田の社」京都市伏見区石田森西に天穂日命神社がある。
「皇神」その土地を支配する神。
「幣」神に祈るときにささげるもの。
「取り向けて」神に供えて。
「逢坂山」滋賀県大津市南西部、京都府との境にある山。
全体が、奈良から大津までの地名を順に詠み込んだ道行文になっている。






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