しまなみ海道100kmウルトラ遠足2005

100kmウルトラマラソンをこうすれば完走できますという「黄金の定理」があったとしても、
ぼくはそれを誰かに教わることは不幸なことだと思っている。
自分で発見する喜びを奪ってしまうことになるからだ。
また、「黄金の定理」は各ランナー自身の中にしか存在しないものでもある。
夜久弘・決定版!!100kmウルトラマラソン−本文より−

半年前、しまなみに参加を決めた時には上記の意味がまだよくわかっていませんでした。
初めてのしまなみ挑戦を終えたいまならはっきりこの意味がわかります。
ウルトラは、フルマラソンまでのマラソンとはまったく趣のちがうものです。

さて、このたびは初めての100km挑戦なのに結局月あたり100kmくらいしか練習できず、
さらにGW前にはヘルペスを患って、いちばん走り込める時期に逆に体力をえらく消耗してしまうという
たいへん悲しい状態で、強烈な不安を背負っての参加となりました。

OCAT発9:15の福山方面行き近鉄高速バス「びんごライナー」にて出発。
車内はみるからにランナーのみなさんばかりで「しまなみウルトラライナー」みたいです。
車中、明玲さん(minrei’s PhotoDream管理人)から応援メールをいただきました。
元気でましたp(^_^)q

2時ごろだったか、予定よりそこそこ遅れて福山駅前に到着。
さっそくラーメンを食しましたが、
なんというか韓国語でも中国語でもない、不思議な外国語を話すアジア系のみなさんがちゅるちゅるラーメンをすすってて
日本語を話すのは2人の店員さんと私だけという状態のなかでいきなりカルチャーショックをうけました。

その後、今回初めてということもあり、翌日のスタート地点でもある福山城へ行きました。
「しまなみ海道100kmウルトラ遠足スタート地点」の横断幕がすでに張られています。

  新幹線福山駅からの眺めでもおなじみ、福山城。

そしてお決まりの天守閣制覇。

  天守閣からスタート地点を見下ろす。駅も見えてるわな。

夕方は伊奈いいさんみやけんさん(ともに走快ねっとRC)に誘っていただいてた
UMML(ウルトラマラソン・メーリングリスト)の前夜祭に参加しました。
みなさん陽気で気さくに話しかけて下さり、
しかも食欲旺盛です(これがウルトラの必須条件かな、とも思う)。
とにかく胃腸が丈夫そう。
やはりまる1日、給水給食だけで走り続けるには丈夫な胃腸が不可欠と感じました。
(自分はふだんからあまりたくさんのごはんを食べないです。)
それに、受付場所の雰囲気などからも感じていたのですが
どこかホノルルマラソンに似ています。
「今年もしまなみに帰ってきた」っていう雰囲気が充満していて
ちょっとそこいらの国内大会で感じる「ギスギス感」がまったくありません。
いっぺんにこの雰囲気が気に入りましたv(^^)v
翌日の100kmに対する不安はてんこもりでしたが、
期待もふくらんできました。

前夜祭は8時頃お開きとなりましたが
ホテルにもどっても寝つくことができず、
結局寝たのか寝てないのかわからないような状態で3時30分にホテルをでました。

ところで、ホテルは福山駅の南側、スタートの福山城は駅の北側だったのですが、
時間が早すぎるせいか福山駅が閉まっていて通り抜けできません。
あちこちさがしまわってやっと連絡通路を見つけて福山城に入ったのが4時前だったかと思いますが
真っ暗で、誰もいません。
???
荷物の預けとかどうするのん???

でもスタートの横断幕あいかわらずはってあるしなー。

しばらくすると何人かランナーがやってきました。
しかし彼らは荷物をもっていません。
尋ねてみるとこれまた駅の南側のニューキャッスルホテルで受け付けとのこと。
「・・・」
へとへとになって荷物を預けにいきました。

荷物を預け、再び福山城へもどるとこんどはそこそこの数の人が来ています。
空もうっすら白んできました。
一人でいるひとに話しかけてると初参加、初ウルトラのひとが多いです。
ウエストポーチで携帯する荷物を確認していると、
ケータイに同じホテルだったみやけんさんから
「これからホテルでます。」
とメールが届いていました。
しかも発信は3時30分(私がホテルをでた時間)。
「はちゃー」
「わしはなんてあわてんぼなんざんしょ!」
などと反省していると
今度は伊奈いいさんから「いま、どこにいますのん?」とのメール。
はい、消耗しきって福山城におります・・・。

おふたりと落ち合ったころにはもうランナーがいっぱいでてきていました。

  4時42分。もうじき夜明け。
   ポチ 伊奈いいさん みやけんさん 佐藤さん

午前5時、福山城をスタート!
うしろのほうからごくごく自然に流れにのってスタートしたつもり。
最初は国道2号線に沿って尾道をめざします。
気温も低く、すずしいというか寒いくらいでジョギングにはベストのコンディションと思われ…。
しかし、なかなか尾道に到着しません。
自分は上等な時計をもっていないので、
エイドステーションごとにデジカメで写真をとり、
写真データのなかの撮影時間でもって所要時間をはかることにしております。

  5時41分、5.3kmエイド到着、まだ福山市内です。楽勝楽勝。

  6時13分、10.3kmエイド、これまた楽勝。まだ福山。最初の10kmは1時間13分。

コーラがうまかったなー。
トンネルがあってなんだかこわいです。
意識してゆっくり走っているつもりですが、どうしても競走馬でいうところの「かかって」いってしまいます。
ちなみにエイドでは、必ず給水をコップ2杯することとバナナを1切れ食べることにしていました。






  6時46分、15.2kmエイド。
  まだ福山。奈良でもアオキさんはいつも店じまいしてるだよ(^_^)

うどんがありました。もちろん食べます。うまい、うまい。
しかし、うどんを食した後、猛烈にお腹がいたくなりました。
しばらく辛抱してましたが、冷や汗がたらたらでてきます(^^;
尾道にはいってからどうしようもなくなりENEOSのGSで手洗いを拝借。
快く貸してくれたスタンドのおにいちゃん、あんさんのやさしいお気持ち、忘れまへんで!
で、7時30分ごろになって初めて海と橋(尾道大橋)がみえました。
大興奮!!
なんだかうれしくて写真とってしまいます(^^)v

  7時31分、尾道大橋(385m)。






  7時33分、20.2kmエイド。ついに尾道にはいる。
  10km〜20kmは1時間20分。

  なんと頭書で紹介したウルトラマラソンの本でも紹介されている
  傘かぶりランで有名な「完走請負人」斎藤安広さんを発見!
  (右側のフランス色の傘をかぶってる方)
  ますますうれしくなって気合いは絶好調。
  しかし、身体は暑さでばててきてました(^^;

尾道大橋下の信号待ちで昨日の前夜祭でお知り合いになった"風切るド根性娘"かなっちに追いつかれました。






  7時36分、尾道大橋下信号待ちにて。
  元気ハチュラチュ楽勝状態のかなっち。うらやましー。

さて、はじめて橋への階段というものを登ることになりました。
なかなかえぐいです。

  7時42分、尾道大橋への登り階段。えぐ。

登りの途中で夫婦連れ(?)と思われるペアの女性が具合悪そうです。
連れ合いの方が寄り添って声かけておられます。
しかし、気温があがるのはまだまだこれからと思われるときにほんまにえげつない登りです。
やっと階段+坂を登りきり、
尾道大橋を渡る直前に伊奈いいさんに追いつきました。

  7時44分、尾道大橋をバックにして。photo by 伊奈いいさん

しかし初めての橋ってうれしかったんでしょうなー。
写真がいっぱいのこってます(^^ゞ
さて、足指にマメができていたので、橋を渡り向島についてすぐのところでテーピング。

8時過ぎ、しーちゃん(走快ねっとでのHN:てつごろう)より応援メールをキャッチ。
すでに暑さにやられていたので、こまめの応援メールをリクエストする。
(彼はほんまに1時間おきにメールくれました。これでどんなに元気が出たか…。涙ちょちょぎれ。)

  8時12分、24.8kmエイド、スイカを発見。

食べる食べる。うまいうまい。みなさんとっても親切。
意識してバナナを多めに食べる。

そして私のマラソンのアドバイザー
「スポーツ館ミツハシ」奈良本館重永さんおすすめの
「アミノバイタルタブレット」と「ザバスエナジーアップタブ」をこまめにかじります。
おかげさまで、身体は暑さで参っているのに
足の筋肉の方は、攣ったり張ったりしません。
マメができてるのはしかたないか…。
またいいアドバイスお願いいたします(^^;

しかし、なんというか流れに乗れないというか、
走るペースがうまく定まりません。
”がーーーっ”ていってしまったり、足を前にやってもぜんぜん進まんかったり…。
なんだかとっても”変!”






  8時49分、29.3kmエイド、向島最後のエイド。
  20km〜30kmは1時間16分。はっきり言ってとばしすぎー。

  同じく8時49分、エイドから因島大橋を発見。

因島大橋(1,270m)が見える。
「おーーー、でかい」と思うが、走っても走ってもなかなか橋が近づかない。
「なんでや?」
で、橋の下につくとどえりゃあ階段…。

  9時4分、強烈な階段を登る。暑い。

階段を上りきっただけで燃え尽きてしまい、
長い長い因島大橋をトボトボと歩きます。
日射しが強くてしんどかったところからこの橋にきて、
この橋の歩行者道路は自動車道の下にあるもんだから
日陰になってめちゃめちゃ気持ちいいんです(^^ゞ

と、後ろから伊奈いいさんに追いつかれました。
「ここの日陰でできるだけ走っときや。日なたでは走れんから。」
とのアドバイスを頂戴する。
「なるほど!」
と思いながらサクサク走り去る伊奈いい氏をパチリ。

  9時19分、伊奈いいさんの後塵を拝す。

とぼとぼと因島大橋をわたり因島に上陸。
もうのどの渇きが辛抱できなくて、&最初の頃に飲んだコーラの味が忘れられなくて
自販機をさがします。
やっとこさ下り坂の途中で自販機を見つけました。
しかし、なんだかみんな心なしか足取り軽やかに坂をくだっています。
「もしかして?」
と思いつつ足早にランナーが進む先についていくと…

  9時31分、35.0kmエイド。

ここがかの有名なオレンジ生搾りジュースエイドだったのです。

「うまーーーい!バカウマ!!」
オレンジジュースで一瞬生き返ります。
ここで、足の裏にさらにテーピングをして出発します。

しかし、よくよく思い返してみると、私、エイドステーションでぜんぜん休憩してませんでした。
これがいかんかったんだと思います。

真夏のような(というかはっきり言って”真夏そのもの”)日射しがボディブローのように身体をいためつけてきます。
このあと自販機でお茶、コーラ、コンビニでアイスなど補給しまくりました。
とにかく、因島は長い長い島のように感じました。
(実際のコースを振り返ってみるとそんなに長くはありません。しかしここからが自分にとってのウルトラの壁でした。)

  10時44分、41.0kmエイド。30km〜40kmは1時間55分。

因島最後のエイド。もうフラフラでした。
ちなみにこの時点では先々についての見通しなど何も考えず、
ただ暑い暑いと思いながらちゃくちゃくと歩を進めておりました。
不思議と足の筋肉は痛くなかったです(これはまったくもって重永さんのおかげ)。
ただ、足裏のマメをかばって歩いたり走ったりしていたので
またその影響で別のところに新しいマメができて、それが死ぬほどいたかったです。

  11時4分、生口橋(790m)を発見。

この橋へのアプローチはすごーーいループ坂を登ります。
ちゃくちゃくと歩いて登ります。
しかし歩いても歩いても橋の渡り口にたどり着きません。
目が回りそうなくらいぐるぐる回りながら登ります。

橋へ登るループのてっぺん付近の公園ぽい休憩所のベンチでひとりのランナー(推定50才♂)が真っ青な顔をして
横たわっていました。
フラフラで登ってきた私に懇願するような目で話しかけてきます。
「あの、助けてください…。」

…もとより応急措置やらそういったたぐいのものに関する知識が皆無の私、
通常なら近くの大会スタッフを探すところですが、
今はヘタするとコースさえ見失いそうなウルトラマラソンのコース上。

だれもそんなひといるはずがありません。

しかし、目の前のランナーさん真っ青な顔で、だらだら冷や汗を流したはります。
しかも手でかばっておられる右足すねの部分は青白くぷくっと腫れ上がっていて
「どう考えても疲労骨折かなんかで骨折してそう」に思います。
あとからやってくるランナーにも何か手当法知ってる人いないか聞いてみますが
レベル的に気持ちがいっぱいいっぱいの人みたいな方が多く、
「すまん、わからん」みたいに会釈して「歩き」去っていかはります。

わたしもそれなりにあせってはいたのですが、
どう考えてもほうっていくわけにはいかず、
消炎スプレーふってみたりいろいろやってみます。

「ふくらはぎやったらのばしてみたりするといいんですけどねえ」と話しかける私にそのランナーさん、
「じゃあ、すねだから、すねを伸ばしてもらえませんか?」との逆提案。

生兵法はけがのもとなどといいます。
しかもえらい真っ青にすね、腫れ上がってるし…
でもこの際、本人が頼んでるということもあり、
ものは試しということでぎゅーーとつま先押してすねをのばしてあげました。
痛がるかと思いきやめちゃ気持ちよさそうにうっとりしたはります。

「これは案外いけるかもしれん!」と思い、そのままじっくり伸ばし続けてあげました。
と、不思議なことに青白い腫れがひいてきました。
いまだに不思議なんですがどうもマジで蘇生されたようです。

「よかったですねー。」

「ありがとうございました。生き返りました。足を止めてすみませんでした。」

「いえいえ、僕もいっぷくするきっかけが欲しかったんですよ(^0^;
 じゃ、しばらく休まれてから来て下さい。
 また、追いついて下さいねー。」

などと冗談かましながらすがすがしい気分でお別れしました。

ここでどのくらい時間がかかったのかはわかりません。
しかし、これは「ロス」ではなく、これが「しまなみ」なんだと思いました。
その後
「あー、わしは今までなんてあせってたんだろう。
 たしかに、時間内完走は大きな目標のひとつやったけどこの大会はそれだけが目標とちがったはずやー。
 遠足(とおあし)や、遠足(とおあし)。
 タイムたら完走たらばっかり気にしてたらあかんあかん。
 いけるとこまで楽しめたらええやんか。」

と悟りをひらいたような気分になりました。

そしてちんたら歩き始めたところ、なんとみやけんさんに追いつかれました。
なんとしまなみ完走歴3回(しかもすべて制限時間内)のみやけんさんはこんなペースで遠足を「楽しんで」いたのだー!!
ウルトラって奥が深いざますー。

しかし、ゆっくり着実に「走っている」みやけんさんにくらべて私はすでに「だらだら歩き」の状態。
ペースの失敗を痛感したのでした。

ところで、
「50kmまでがんばってみます。」
といってたあのランナーさん、
どうしたんだろうか?
あのあと一度追い抜かれて、その後、会えなかったけど…。

もう100kmを目標にするのでなく、
10km進んでは次の10kmを目標にすることにした私、それなりに楽しいです。
つらいのは、まめがどっさりできて豆屋ができるくらいになっている足の裏が死ぬほど痛いこと。
ちなみに、いままでフルマラソンでよくあったように「足が攣る」といったことはまったくなく、
筋肉はまったくダメージありませんでした。
(くどいですが給水やサプリメントの影響大と思われる。…後学のため。)

  11時32分、生口橋上から見る瀬戸の島々。ここをわたりきれば生口島。

生口橋を渡りきったところで息子と娘からのメールに気づきました。
「がんばってるでー。楽しんでるでー。」と返信。

  11時51分、46.5kmエイド。ついにフルマラソンの距離を超えて未知の領域に突入!

  12時30分、やっとこさ中間49.9kmエイド。40km〜50kmは1時間46分。

到着した時点でラスト20人にはいっていたらしく
「もうみんな全部食べていってやー。あんたら最後やしぃ〜。」と陽気な励まし(?)の声をかけてもらう。

ありがとうございます。

バナナいただきます。

オレンジいただきます。

おにぎりいただきます。

梅干しいただきます。

カステラいただきます。

パンいただきます。

スイカいただきます。

ゼリーいただきます。

お茶いただきます。



ここで長袖Tシャツを半袖に着替えて、またもや足の裏にテーピングぐるぐる巻きにしました。
しかし、足裏の痛いのはいっこうに治まりません。
もうこのまま行くしかないと決意。

エイドを出発するときに今回初挑戦というランナー(推定50代♀)
「このぐらいのペースでいくと何時くらいにゴールできますかー」と尋ねられました。
「すみません、私、初めてでまったくペースわかりませんねん。」と答えると
その方は「ぴゅー」と足早に私を置き去りにして行かはりました。
きっといまの人はちゃんとゴールできたと思います。

その後の生口島は、はっきりいって修行というか苦行状態でした。
いままでにましてじりじりと照りつける太陽、
とぼとぼと歩きますが、
もう前を行く人も後ろから来る人もほとんどいません。
ごっつう不安になりますが
道なりに歩いているとそれなりになんとかいけてます。

  14時18分、55.9kmエイド、もうフ〜ラフラ〜。ゼリーがうまかった。

砂浜のそばを通りますが、「真夏ちゃうかー」と思うような雲。
青梅マラソン参加賞の黒いTシャツが塩ふいて真っ白になってます。

  14時20分、サンセットビーチ。






  14時42分、ついに多田羅大橋(1,480m)を発見。
  ここを超えると念願の愛媛県(大三島)だー。

しかし恒例によりましてなかなか橋にたどりつきません。
でも、海、めちゃきれいでした。
何度見渡してみても、前にも後ろにもランナーはいません。
たまーに後方にありんこみたいな大きさで一人みえたかと思うと
次に振り返ったときにはずんずん近づいてきていてサクッと追い抜かれます。
追い抜きざまにみなさん
「お疲れ様ですー」
と声をかけてくださるのがなんともいえず快感…。

  15時1分、やっと橋の高さまで登ってきました。

かみしめるように橋を渡ります。
橋から見下ろす海がめちゃきれい。

橋の真ん中へんで、「多田羅大橋鳴き龍」ゆうものをみつけました。
要は「かしわ手」を打つとシャンシャーンとひびきよるんですな。
何度も手をたたいてみました。
だって、後ろで誰も順番まってませんもの(^^;

あと、この橋の上で、チャリンコに乗ったランナー数人(ゼッケンつけていた)に追い抜かれました。
なんだかラクチンそうで楽しそうにも見えましたが、
心中を察するところ複雑でした。
だって、私はまだしまなみ挑戦中。
彼らは理由はともあれ今回はすでに完走をあきらめた状態。
彼らも「お疲れ様ですー」と声をかけてくれる。
「はいー、お疲れ様ですー」と私。
このままレンタサイクルで今治をめざすことにしはったんでしょうか…。

多田羅大橋を渡りきるとすぐに大三島唯一のエイドステーションがありました。

  15時41分、15時41分、62.1kmエイドに到達。50km〜60kmは3時間21分!

数人の先客がおられます。
エイドでの会話がたのしいです。
ここでお知り合いになった人と結局最後まで励まし合って走る(?)ことになりました。
やはりウルトラ初挑戦の人が多く、
そしてフルの持ちタイムは計ったように4時間30分〜5時間30分の中にはいっています。
やっぱり同じレベルの人がそろっちゃうんだなー、と妙に感心いたしました。
あと、今回は体調がもうひとつなんだなー、って人もいました。
体調がすぐれないのにここまで来るだけでも尊敬!

ここのエイドでは、くじけかけてる我々に
「今治に泊まる気だったらいつまででもゴールでまってるよー」
とスタッフの方が声をかけてくださいました。

うれしいことはうれしいし、いつまででも待ってていただけるのは本当にありがたいことですが、
まる一日中裏方を務めてくださってるスタッフの苦労
大会要項の注意事項に書いてあった
「収容車は用意できないので、小銭を用意して参加し、
リタイアした人はとにかくバスなり船なり使って自力でゴールまでたどりつくこと。」

という最低限のルールを考えると
あれだけ暑かったのにぐんぐん下がっていく気温
だんだん影の長さが長くなり、暗くなってきている状況の中で
さまざまな思いが去来しました。
そしてこの思いはこのとき私のまわりにいたランナーがきっと同じく共有していた思いでした。

足をひきずりながら、そして、一度道に迷いながら
なんとか大三島橋をキャッチしました。

  16時47分、大三島橋(297m)。橋は短いがアプローチが長かったー。

大三島橋から海を眺めると、とにかく潮の流れがえげつなく速いなーと感じました。
そして、間違いなく日の暮れが迫っていることを感じました。

大三島橋を渡りきって伯方島に来ると、ほどなく66.7kmエイドがありました。

  17時9分、66.7kmエイド。塩羊かんがうまかった。

伯方の塩あめもうまかったです。
なんかこちらが精神的に参ってるからかもしれませんが、
ここのスタッフの方、異常に親切に感じます。

おそるおそるこの先から今治への足について尋ねてみると
6時25分に次のエイドステーション(70.8km伯方SCパーク)を出発するバスが
今治行きの最終です、とのこと。

競技終了の21時までまだ4時間ほど残っていますが
フラフラの頭でいくら計算しても1時間で4kmほどしか進めていないんだから
あと30km同じペースでいったとしても軽く午前0時を回ってしまいます。

しかも寒くなってきたのと暗くなってきたのとで気持ちが弱気の方向に進んでいきます。
さらに親切なスタッフの方
「なんでしたら車で次のエイドまでお送りしましょうか?」
とのお気遣い。

うんにゃ、ここまできたんだから負けてはならぬ。
とりあえず次の70kmエイドは、たしか到着したランナーの名前を呼んでくれるので有名なエイドだから
「そこまではなんとか自力で行って、また、そこについてから先のことを考えましょう。」
と、その時そばにいた「同志たち」と励まし合いました。

  17時10分。「同志たち」と誓いの記念撮影。

でも、きっとみんなこれから70kmエイドまでが最後だと無意識に考えたのでしょう、
ひさしぶりに歩かないで次のエイドまでゆっくりながらも「ジョグ」で進みました。

初めてだったか、あるいは2度目だったか、漁港をとおりかかりました。
何人かの人がサビキ釣りをしています。
しかもキラキラ光るサカナを鈴なりにして上げています。
「何の魚だろう?」
思わず足を止めて見ますとウルメイワシの入れ食い状態でした。
しばしきれいな海と魚に見とれて伯方島サビキ倶楽部の方に「さいなら〜」って言って先へ進むと
いきなり70.8kmエイドでした。

  17時39分、70.8kmエイド到着。60km〜70kmは1時間58分。

「ゼッケン48番の太田さん、奈良県からお越しですー♪♪」

思わず手をふってしまいます。

「そうめん食べて下さい。どうぞ。」

「ありがとうございます。」
と、1杯いただく。

「もう1杯どうですか。」

「はい、ありがとうございます。」
ちゅるちゅる…。

「もう1杯どうぞ。」

「いえ、まだあとの方がいらっしゃいますから…。」

「いえ、ほとんどいたはりませんから(^^ゞ」

「………。」

そうだったですか(^^;
では、いただきます。
と、4〜5杯いただきました。
でも、まだまだ残っています。

そうめんを食べ終えてしばしほっこりし、周囲のランナーを見ていても
どうも次に向かって出発する人は見あたらず、
みなさんこのあたりで「ゲームオーバー」を決意しておられるようです。

と、マッサージ台に寝かされてピクピクけいれんしている人がいます。
必死にマッサージを施されていますがけいれんは治まらない様子。

スタッフの方が電話で救急車の手配を始めました。
話の内容を聞いていると
ついさっき搬送依頼した人と同じ症状だとのことで、
脱水なんだかオーバーフローなんだかわかりませんが
どうもリタイアのタイミングを逸して挑戦を続けたばかりに
このような事態に陥っておられるようようです。
けっこうこのような状態になった方がおられたようです。

しかも、この方は単独参加のようで、連絡すべき人もいない模様…。

ご本人の無念さもさることながら
スタッフのみなさんもタイヘンそうです。

…ここでリタイアの決心を確定しました。
執着心だけで走り続けることはできません。

無念な気持ちもありますが、
ここからの大島がいちばんタイヘンだというお話しも
これまでのエイドで聞いていました。
ここから出発して、真っ暗な道中でへたるわけにもいきません。
スタッフのご好意に甘えたとしても、やはり午前0時を過ぎてのゴールは
ルール違反のように思えます。

それに、どう客観的に判断しても疲労こんぱいしている自分。

いままで参加したマラソンで
時間制限にひっかかって強制的に撤収となったことは多々ありますが、
自らの決心でリタイアを決めたのは初めてです。(練習のため参加したユリカモメは除く。)

でも、初めてフル以上の距離を走って
ここまでこれたんだという充実感でいっぱいでした。

早朝5時にスタートして
夕方の6時まで
距離としては70kmでしたが
自力でここまでこれたことにそれなりに感激しました。

  17時44分、リタイアの地より伯方大島大橋を望む。すでに夕方のビーチ。

  17時46分、距離表示を手にして記念撮影。この無念さを次回挑戦に!

エイドステーションと到達時間
N0.距離
(km)
区間
距離
(km)
エイド設置場所エイド
撤収
時刻
(公式)
到達
時刻
所要
時間
(分)
sec./km
15.35.3サファ福山ショッピングセンター前5:555:41417:44
210.35.0福山・神村トンネル入口6:456:13326:24
315.24.9福山市高西町・アオキの先7:356:46336:44
420.25.0尾道大橋下8:257:33479:24
524.84.6向島・デオデオ前9:108:12398:29
629.34.5向島休憩所9:558:49378:13
735.05.7因島・アメニティー交流館10:509:31427:22
841.06.0ホットスパー因島店11:5010:447312:10
946.55.5生口島・瀬戸工作所前12:4511:516712:11
1049.93.4生口島・B&G海洋センター13:2012:303911:28
1155.96.0生口島・サンセットビーチ14:0514:1810818:00
1262.16.2大三島・大三島IC広場15:3015:418313:23
1367.75.6伯方島・大三島橋を渡った所16:2517:098815:43
1470.83.1伯方SCパーク16:5517:39309:41
1576.35.5大島・宮窪港前17:50
1681.45.1大島・吉海町バラ公園18:45
1788.26.8来島第1大橋のループを上った所19:35
1892.64.4来島第3大橋を渡った所20:20
1996.94.3今治市・伊予銀行前向島休憩所21:00
20100.03.1今治城(ゴール)なし

さて、寒くなってきたですが
バスの発車までしばらく時間がありました。

7〜8人の方とバス停でご一緒しましたが、
みなさん初参加とのことでした。
残念ではありますが
みんなすがすがしい顔をしています。

みなさん神経が高揚していることもあり
それぞれに異常に多弁です。

自分もこれが最初で最後のウルトラ挑戦のつもりであった旨熱弁をふるいます。

バスが到着しました。
今治までは840円です。

運転手さん、我々の姿を見て
終点についたあと今治城まで回ってくださるそうです(めちゃラッキー)。

大三島から乗ってる人を合わせるとランナー乗客は10人を超えています。

がやがやにぎやかなバスが来島海峡大橋を渡るときがきました。

夕陽がきれいです。
たとえようがありません。
あんなにあこがれていた今治にもうじき上陸です。

…と、橋の上をたくさんのランナーがありんこみたいになって進んでいます。

車上のわれわれはみんな息を呑みました。
みんなあこがれのまなざしで橋上のランナーを応援します。
このときの気持ち、言葉になりません。

  18時43分、来島海峡大橋のサンセット。ちいさいがランナーが確認できる。

ほどなく今治城に着きました。
ゼッケンをはずしてゴール地点へいそぎます。

そしてまだ明るさの残る今治城で見たものは
まさに「完走者ひとりひとりが勝者である」ゴールシーンでした。

まぶしくて美しくて感動的です。

来島海峡大橋で見たランナーと
ゴールの今治城で見たランナーへの感動、あこがれの気持ちから
私のしまなみ再挑戦は決まりました。

いつになるかはわかりません。
でも、今回よりもしっかり準備して
16時間ある時間をせいいっぱい使って
しまなみ海道を完走したいと思います。
こんどは少々時間オーバーしても元気にゴールするから許してくださいね(^^;

2005年6月4日、私は残念ながら完走できませんでしたが、
たいへん楽しく感慨深い「遠足」を1000名のランナーと
たくさんのスタッフの方と私設エイド・沿道のみなさんと共に
経験することができました。
同じ場所で、同じ時間を共有できたことをたいへんうれしく思います。
また、しまなみでお会いしましょう!

  19時20分、今治城。次回は必ずテープを切りたい。

教訓
1 水分・塩分・栄養は意識して摂取する。
2 最初は歩くくらいの気持ちのほうがあとあとダメージが少ない。
3 食料は持たずともよい。サプリメントはたいへん有用。
4 自己責任で。リタイアは残念ではあるが恥ずかしいことではない。
5 首が日焼けすると消耗が激しくなる。

おまけ

当日夜は、学生時代の部活以来のような深い爆睡も経験することができました。
翌日は予讃線で松山へ移動し、
道後温泉を楽しみました。
つるつるのすべすべですごくいいお湯でした。
ここもぜひもう一度来たいですv(^^)v

  坊ちゃん列車。

  "はいからさん"と。はっきりいってとっつあん気分。

  道後温泉本館。いいお湯でした。

  駅前の仕掛け時計。




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